研究概要 |
健康日本21はエタノール量20g(1合)以下の飲酒を勧め,同140g/週以下は脳梗塞の発症頻度を低下させる。少量飲酒は健康にプラスに働くことが疫学的研究から認められている。合併症などなく病的でない飲酒者を対象に飲酒指導を適切に実施することを目的として,平均赤血球容積(以下MCV)、γ-GTPカットオフ値を用いた適正飲酒量の基準値設定を検討した。 当施設受診者のうち胃切除を受けた者,血清鉄が基準値未満,B型肝炎抗原陽性,C型肝炎抗体陽性の者を除外した。またMCV上昇要因であるビタミンB_<12>,葉酸の関与を検討した。(1)対象者の年齢(2)1週間のエタノール量(3)1週間の飲酒日数(4)飲酒年数。以上の項目を質問紙法により調査した。さらに対象者を1週間のエタノール量により5群に分けた。(男性)1群:非飲酒群,2群:150g未満,3群:150以上-300g未満,4群:300以上-450g未満,5群:450g以上。女性は男性に比較して飲酒量が少量かつ,短期間で肝障害が出現するため,次の5群に分けた。(女性)1群:非飲酒群,2群:50g未満,3群:50以上-100g未満,4群:100以上150g未満,5群:150g以上。MCVとビタミンB_<12>,葉酸の関与は認めなかった。男女ともにエタノール量の増加に伴いMCVは増加した。男性のγ-GTPはエタノール量増加に伴い増加した。男性の適正飲酒(150g)に見合うMCV92fL/L、γ-GTP40IU/L、女性のそれ(50g)はMCV90fL/L、γ-GTP17IU/Lであった。適正飲酒量に対するMCV,γ-GTPのカットオフ値を用いることにより,合併症などなく病的でない飲酒者への飲酒指導に有効と考えられた。なおビタミンB_<12>,葉酸の採血および,健診データの使用については,疫学研究に関する倫理指針に基づいて研究内容を説明し承諾の上行った。
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