研究概要 |
本年度の研究は、地域に在住している生活自立高齢者を対象に閉じこもり割合やその状態像を明らかにすることである。 (1)兵庫県五色町の対象者 地域在住の65歳以上の高齢者2,127人を対象に、閉じこもりの状態像とその関連要因を明らかにした。閉じこもりの判定には外出頻度を用い、1週間に1回程度以下の外出しかしない者を閉じこもりとし、外出介助と社会交流を組み合わせて閉じこもりの状態像をIからIVに分類した。「閉じこもりI」は一人で外出困難かつ社会交流はある、「閉じこもりII」は一人で外出困難かつ社会交流はない、「閉じこもりIII」は一人で外出可能かつ社会交流はある、「閉じこもりIV」は一人で外出可能かつ社会交流はないとした。 閉じこもり率は8.5%であった。その状態像は、「閉じこもりI」が1.4%、「閉じこもりII」が1.0%、「閉じこもりIII」が4.2%、「閉じこもりIV」が1.9%であった。閉じこもりの約半数は一人で外出可能でありかつ社会交流のある「閉じこもりIII」群であり、社会接触のある閉じこもりがいることを明らかにした。また、閉じこもり群と関連する因子には特に歩行能力の低下が強く関連していた。そのため、アンケート調査で閉じこもりと判定された者に対して、「5m歩行速度」・「Timed up & go」・「Timed up & goカップ付き」の3種目の歩行調査を行った。その結果、外出頻度の低下に伴い、各項目の歩行時間が増加し、閉じこもり群には歩行機能の低下があることが明らかになった。 (2)大都市近郊高槻市の生活自立前期独居者 大都市近郊高槻市の生活自立前期独居者1,216人おいて「ひとりで遠出できない」ことが要介護状態移行の危険因子と考えられるかを検討するため、「ひとりで遠出できない」者の特徴を横断的に明らかにした。 前期で生活自立高齢者であっても、「ひとりで遠出できない」者は日常生活自立度の低下や要介護移行リスクを数多く有していた。これら独居者は「近隣閉じこもり」のハイリスク者として注目すべきであることを明らかにした。
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