研究概要 |
放射線影響研究所・長崎研究所では原爆の後影響を縦断的に調査する目的で、1958年より原爆被爆者7,564名(男性3,374名、女性4,190名)を対象として、2年に一度検診を行っている。1958年から2003年(平成15年)までに死亡したり、他市へ転居したりしたために平成15年と16年に実際に受診した対象者は1,691名(男性586名、女性1,105名)である。この対象者で、問診、診察、身長・体重測定、血圧測定、一般検血、生化学検査(血清コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、尿酸、血糖、CRP、インスリン)、腹部超音波検査、心電図検査、脈波速度測定を行い、このうち325名ではアディポネクチン測定を行った。肥満度が大きいと血圧、中性脂肪、LDL-コレステロール、尿酸、空腹時血糖、HbAlcが高く、逆にHDL一コレステロールは低値であった。肥満に伴いHOMO-IRは高くなり、インスリン抵抗性が増大する事が示唆された。肥満者では脈波速度の増大を認め、肥満に伴い動脈硬化が進展していると考えられた。また肥満者では脂肪肝の合併が多く、この脂肪肝では高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロール、耐糖能異常、高尿酸血症を伴い、アディポネクチンが低下していた。脂肪肝ではアディポネクチンの低下によりインスリン抗性が増大する事で高血圧、高中性脂肪、低HDL-コレステロール、耐糖能異常、高尿酸血症を合併し、動脈硬化が引き起こされると考えられた。原爆被爆で脂肪肝が増える事により、被爆者では脈硬化が進展し、心筋梗塞の増大が認められると考えられた。
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