研究概要 |
1.Urine Luckの商品名を持つpyrldinium chlorochromateは成分の6価クロムが尿中の麻薬類tetrahydrocannabinolやoplatesの検出を妨害する。6価クロムは通常、15-diphenylcarbazideを用いた発色法により、定量されているが、その方法は検出限界が0.4ppmで3mlもの試料が必要であり、1時間で11%減少し、かっ尿中では30%発色が低い等、種々の点で改良を要する。我々は6価クロムから還元により、常磁性の5価クロムを安定に作成し、電子スピン共鳴を用いて高感度で、迅速に定量する方法を考案した。還元にはクエン酸を用い、メタノール添加により反応が促進かつ安定化し、1時間後の減少は誤差範囲内であった。5価クロムのg値は1.980で、hypefine splittingは1.84mTであった。検出限界は0.05ppm,必要量は2μlであり、測定時間は5minであった。この結果について2004年日本法医学会で発表した。 2.マンガンが過剰に体内に入ると中毒をおこし、大脳内部の灰白質が変化し、パーキンソン氏病に似た症状を呈する。また一方、マンガンは生体において、超微量必須元素であり、種々のマンガン酵素が知られている。スーパーオキサイドヂスムターゼはマンガン酵素であり、パラコートや種々の薬毒物から生じたスーパーオキサイドを無毒化する。マンガン欠乏はマンガン不足のみならず、マグネシウム不足により生じるため、我々は、パラコート投与及び、マグネシウム不足のラットについて、組織中のマンガン濃度を測定した。マンガン元素に固有な発色法は報告されていないので、我々は先に、電子スピン共鳴による高感度定量法を開発し、報告している。パラコート125ppm投与またはマグネシウム半減食投与を単独に作用させた場合には影響はなかったが、両者を同時に作用させると、肝、腎、心においてマンガン濃度が顕著に減少した。この結果についてJpn.J.Forensic Toxicol.,22,193-195,2004.で報告した。
|