研究概要 |
1.血液中のチオシアンは蒸発させて血液と分離し、発色させて、同定、定量されているが、長時間を要し、妨害も多い。チオシアンは2価の銅及びピコリンと反応させると、ラジカルとなり、ESR法で検出できることを見い出した。生成物は極めて安定で特有のESRシグナルを示すので、この現象に基づいた簡便、迅速な定量法を確立した。この結果について、2005年、日本法医学会で発表し、Japanese Journal of Forensic Toxicology 23:41-44,2005で報告した。 2.6価クロムは細胞膜を通過し、発ガン性があり、3価クロムよりも毒性が高いので、両者を区別して定量することが望ましい。6価クロムは通常、1,5-diphenylcarbazideを用いて発色法により、定量されているが、その方法の検出限界は0.4ppmで、3mlもの試料が必要であり、1時間で11%減少し、かつ尿中では30%発色が低い等、種々の点で改良を要する。我々は6価クロムのジエチルジチオカルバミン酸(DDC)の錯体を作り、これをクエン酸で励起し、イオンスプレー質量分析法で検出すると、5価クロムのCr(OH)(DDC)_3という化合物が検出限度5pg(5x10^<-12>g)で測定出来ることを見い出した。この結果について、2005年、日本法中毒学会で発表し、Analytica Chimica Acta 539:141-143,2005で報告した。 3.Urine Luckの商品名を持つ、pyridinium chlorochromateは成分の6価クロムが尿中の麻薬類tetrahydrocannabinolやopiatesの検出を妨害する。上記2と同様な方法で、検出できることを見い出した。この結果について、2005年、国際法中毒学会(ソウル)で発表し、Forensic Toxicologyで報告予定である2006(in press)。 4.毒物アジ化ナトリウムはエアバッグや防腐剤として使用される物質であるが、日本では7年程前、飲物に添加される事件が数件発生した。アザイドイオンは2価の銅及びピコリンと反応させると、ラジカルとなり、ESR法で検出できることを見い出した。生成物は極めて安定で特有のESRシグナルを示すので、この現象に基づいた簡便、迅速な定量法を確立した。この結果についてAnalytica Chimica Acta 554:202-206,2005で報告した。
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