本年度は、分離カラムの新規充填剤として開発されたモノリス型カラムを利用し、生体試料中の薬毒物抽出への可能性について検討した。 1)装置構成の検討 モノリスが充填されたキャピラリーカラム(外径0.2mm)を固定する基材を検討した。GCへの接続に使用されているグラファイトフェラルを使用した場合、カラム着脱の際に生じる細かい破片がつまりの原因となり、複数回の使用が困難であった。素材をPEEKに変更すると、つまりは解消され複数回の使用にも耐え、ルーチン分析への可能性が示された。 2)尿中覚せい剤の抽出 検査試料の液性を変え、覚せい剤の抽出効率を検討した。覚せい剤のpKaからも予想されたことであるが、液性を酸性にした場合はカラムに保持されず、塩基性にした場合には保持され、抽出可能であった。検査試料に加える緩衝液をpH10とした場合、メタンフェタミンの抽出率は80%であった。 3)HPLCへの直接導入法の検討 モノリスが充填されたキャピラリーカラムをHPLC注入用マイクロシリンジの先端に固定し、薬物溶離液を直接HPLCへ導入した。オフラインでの結果と同様の精度が得られ、直接導入の有用性が示された。 4)既存の抽出法との比較 既存の抽出法では、溶離液の濃縮が必要であったが、本法では濃縮の必要が無い。また、操作も簡便であり、生体試料中の薬毒物抽出の一手法となり得る可能性が示された。
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