研究概要 |
虚血/再灌流(I/R)後のショック発現における一酸化窒素合成酵素(NOS)によるスーパーオキサイド(O_2-)産生の役割をマウス緊縛性ショックモデルを用いて検討した。緊縛性ショックモデルはマウス(C57BL/J,雄性)をイソフルラン吸入麻酔下に一側大腿を輪ゴムで3時間緊縛し、解除することにより作成した。I/R後のO_2-産生を検出するためには蛍光プローベ(hydroethidine)を用いるin situ O_2-検出法を用いた。緊縛解除後5分で緊縛側腓腹筋の毛細管、骨格筋鞘及び細胞質でO_2-産生増加が認められ、ミトコンドリアの局在と一致した。緊縛側筋肉でNADPH diaphorase活性染色は著しく増加し、抗NOS抗体及び抗4-hydroxy-nonenal(HNE)抗体による免疫染色でdも強い陽性を示した。しかし、抗nitrotyrosine(NT)抗体による免疫染色は陰性だった。これらの所見はxanthine oxidaseと同様にNOSも再灌流後のO_2-産生に関与していることを示唆する。再灌流後、肝臓及び腎臓でも抗HNE抗体による免疫染色は陽性を示し、心臓では抗NT抗体による免疫染色が陽性だった。さらに、HPLCによるコレステロール過酸化物及びNO代謝物の定量を行った。緊縛側筋肉及び腎臓で再灌流後にコレステロール過酸化物濃度が増加した。また、血漿中NO代謝物濃度も再灌流後に増加し、定量結果と組織学的所見は一致した。これらの結果はI/R後のNOSによるO_2-及びNO産生が局所傷害のみでなく遠隔臓器傷害にも関与することを示唆する。我々は今回の研究でNOSによるO_2-産生がI/R後のショック発現のイニシエーターのひとつである可能性を示すことができた。
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