研究概要 |
本研究は我々が発見したγ-glutamyl transpeptidase活性を示すヒト精液特異ユビキチン化CD10-CD13酵素複合体(SEGAP)が細胞外のプロテアソーム非存在下でどのような生理活性を示すのかを解明することを目的とする。その中でSEGAPがヒト由来培養細胞において誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を促すことが観察された。iNOSは炎症性に誘導され、産生されたNOは多彩な病態生理活性を発揮する。iNOSを直接検出するにはウェスタンブロット法や細胞免疫染色法が用いられてきたが手技が複雑であるため一般化されていない。そこで、iNOSの特異的配列に従って合成したペプチドおよびマウスiNOSに対する抗体を作製し、サンドイッチELISAによる定量的検出を試みた。 【方法】アフィニティークロマトグラフィーにより精製したペプチド抗体の一部をビオチン化し二次抗体とした。リコンビナントマウスiNOSを抗原とし、プロテインAカラムにより精製した抗マウスiNOSのIgG分画を一次抗体とした。リコンビナントマウスiNOSを標準としてELISAを行なった。 【結果】ラットの肝ホモジネートに標準iNOSを添加後に100,000xgで1時間遠心した上清を測定した結果、良好な回収率と0.1から2ngの範囲で直線性を示す検量線が得られた。Lipopolysaccharide(LPS)によりiNOSは強く誘導されることから、LPSを投与したラットの肝におけるiNOSの発現をRT-PCRによるmRNAの半定量とELISAにより観察した。その結果、iNOSmRNAが発現していないコントロール肝ではタンパク質1mgあたり0.6ng以下で、mRNA発現が観察されたLPS投与ラット肝では約1.4ngのiNOSタンパク質が定量されたことから、ELISAにより細胞・組織中のiNOS測定が可能と考えられた。 以上の結果を踏まえ、SEGAP処理により培養細胞内で誘導されるiNOSの遺伝子レベルでの発現を観察するとともに、サンドイッチELISAを用いてタンパク質レベルで定量を試みている。
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