研究概要 |
継続して行っているSe式血液型遺伝子の温度勾配電気泳動法による一塩基多型(SNP)解析について,日本人に代表的な対立遺伝子であるSe1,Se2,sejおよびse^<fus>の分析条件を検討した。ヘテロ接合体試料では通常のPCR反応を行うだけでヘテロ二重鎖が十分量形成され,再会合のための特別の手順を設ける必要がなかった。ヘテロ接合体試料では温度勾配電気泳動法で遺伝子型の識別が可能で,増幅産物中の塩基置換の個数に相関してバンドの数が増えていった。ただしホモ接合体試料の場合には遺伝子型にかかわらず常にバンドは同じ断片長の1本しか検出されないため,特定の対立遺伝子試料と混合して再会合反応(95℃で加熱後,50℃で保存)を行う必要があった。 温度勾配電気泳動法は遺伝子型判定に適していたため,さらにABO式血液型遺伝子の分析への応用を始め、エクソン6(全領域216bp)とエクソン7(245bp)とを個別に増幅し代表的な対立遺伝子A,B,O^A,O^Gを分析した。エクソン6では,A,O^AとB,O^Gのホモ二重鎖の分離が可能で(GC含量の差による),2種類の対立遺伝子を混合したヘテロ二重鎖は欠失とミスマッチの有無に応じて異なるバンドパターンを示した。3種類の対立遺伝子を混合した場合は,2種類ずつのバンドパターンを組み合わせたパターンを示した。エクソン7では,GC含量の差によりA,O^A,BとO^Gのホモ二重鎖はの分離が可能で,2種類の対立遺伝子を混合したヘテロ二重鎖は,ミスマッチの種類に応じて,異なるバンドパターンを示した。3種類の対立遺伝子を混合した場合は,2種類ずつのバンドパターンを組み合わせたパターンを示した。以上のように温度勾配電気泳動法により効率的にABO式血液型の遺伝子型の判定が可能だった。
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