研究概要 |
Se式血液型は体液を用いた血液型検査結果を検証する上で重要であり、温度勾配ゲル電気泳動法を応用して日本人に多い4種類の対立遺伝子Se1、Se2、sej、seを解析したところ、ヘテロ接合体試料では遺伝子型に特異的な泳動パターンが検出され、型判定が容易であることが判明した。ミスマッチが1塩基の場合はヘテロ二重鎖が1-2本、2塩基の場合は4本のバンドが検出され、未知の対立遺伝子を解析した際にミスマッチ数が泳動パターンから予想できる可能性も示唆された。ホモ接合体試料ではGC含量の差により異なる泳動度を示すが、特定のホモ接合体試料を混和し再会合させることで生じさせたヘテロ接合体の泳動パターンで遺伝子型を判定することが可能だった。 この方法をABO式血液型に応用し、主要4対立遺伝子A、B、O^A、O^Gを対象としたところ、エクソン6ではA, O^AとB, O^Gのホモ二重鎖の分離が可能で,2種類の対立遺伝子を混合したヘテロ二重鎖は欠失とミスマッチの有無に応じて異なるバンドパターンを示した。エクソン7ではA, O^A, BとO^Gのホモ二重鎖の分離が可能で,2種類の対立遺伝子を混合するとミスマッチの種類に応じて異なるバンドパターンを示し、遺伝子型の判定が可能だった。 さらにミトコンドリアDNAの高度多型性領域1(mtDNA HVI)への応用を検討し、ホモ二重鎖ではGC含量に起因する電気泳動度の相違を示し、2試料を混合して再会合させた場合はヘテロ二重鎖が検出され、試料問での塩基配列の同一性を検出するのに適していた。 ヘテロ二重鎖のミスマッチ部位を切断する方法についても検討したが、報告されている方法では不可能で、型判定への応用はできないことが判明した。以上より、今回検討した温度勾配ゲル電気泳動法が型判定や変異体検出に最も適したハイスループット検出法であることが確認され、その標準的な手法を確立することができた。
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