研究概要 |
基礎実験として水相と有機溶媒相の二相に分離する条件を親水性有機溶媒の種類と添加する塩の種類との関係およびpHとの関係について調べ,このデータを基礎として応用性について検討した。 1.塩処理による二相分離 親水性有機溶媒を用いた二相分離の液-液抽出法で使用できる有機溶媒と塩類の組合せを数組作ることが出来た。これによって使用する塩類によってpH調整することを可能として操作の簡便化を図ることが出来た。また高速液体クロマトグラフ質量分析計に対応する塩類として酢酸アンモニウムが見出された。 2.応用の検討 (1)ベンゾジアゼピン系薬物やバルビツール酸系薬物,血圧降下薬などへの応用 barbital, Phenobarbital, pentobarbital, secobarbital, nitrazepam, diazepam, bromovalerylurea, apronalide, prazosinなどについて検討した。その結果,二相分離した親水性有機溶媒に選択的に移行した。また本抽出法で抽出した抽出液を濃縮処理することなく直接紫外吸収検出器-高速液体クロマトグラフで分析して定量性について検討した。その結果,再現性,検量線および検出限界は実用性のある結果が得られ,中毒レベルの濃度測定への応用性が認められた。また薬物によっては治療レベルに対応が可能であった。定性では測定波長を変えたクロマトグラムのピーク面積比を比較する方法を考案し,紫外吸収検出器の欠点であった定性能に改良を加えた。これによって定量・定性精度を向上させることが可能であった。 (2)Triage検査試料の前処理としての応用 Triageは尿を対象とした濫用薬物簡易検査キットである。しかし事例によっては胃内容や血清を検査対象として検査する必要がある。前処理はNaCl-アセトニトリル抽出液を遠心濃縮して乾固後,等量の純水で再溶解させた。これを用いてTriage検査を実施した。その結果,抽出した結果が無処理の結果に比較してHPLCの定量結果と矛盾が認められなかった。このことから抽出処理の有効性が確認された。
|