4-ヒドロキシ酪酸(GHB)は、GABAの代謝物として生体では主に脳に存在し、中枢神経系の抑制効果を持つことが知られているが、近年麻薬としての乱用が問題となっている薬物である。しかしながら、死後の薬物分析において、GHBが生前投与されていないにもかかわらず血中あるいは尿に高濃度に認めちれることが近年報告され、生前投与されたGHBと死後産生されたGHBとの鑑別において、死後内因性に産生されたGHBのprecursorおよび産生経路が解明される必要がある。平成15年度はマウス肝臓を用いたGC-MSによるGHBの検出方法を検討し、死後1ヶ月までの肝臓における死後の経時的GHBの定量をおこなった。その結果、GHBは死後0時間ではほぼ検出限界以下であったものが、死後1週間では447.19±227.26nmol/gまで経時的に増大したが、3-ヒドロキシ酪酸(BHB)にあっては58.53±19.58nmol/gと産生量は低かった。一般に飢餓や糖尿病など、糖質の供給あるいはその利用が不十分な時にはTCA回路が効率よく働かなくなることから、蓄積されたアセチルCoAからBHBが産生されると考えられている.本結果は、GHBがBHBとは異なる産生系が関与する可能性を示唆した。次に、二日間水のみ与えられたマウスに、腹腔内より、数種のアミノ酸100mg/kg量をそれぞれ別々に投与し、肝臓からのGHB量を測定した。その結果、アミノ酸を投与したマウスでは死後24時間で投与しなかったモノに比べ有意にGHBが産生された。さらに、死後採取したばかりの肝臓オモジネートに抗生物質を投与後室温にて24時間放置したものと投与しなかったものを比較したところ、投与したものではGHB量が有意に低かったが、BHB量ではほぼ差が認められなかった。これらの結果から、死後経時的に産生されるGHBは、生体中のアミノ酸から細菌により分解され産生された可能性が高いと考えられる。現在、詳細についてさらに検討中である。
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