1、H. pyloriに対する生薬のin vitroにおける効果 昨年度の研究の結果、漢方薬としては補中益気湯(TJ-41)に強いH.pyloriに対するin vitroにおける抗菌効果が認められること、薬剤耐性菌に対してもほぼ同様の抗菌効果を示すこと、10代以上の継代培養を実施しても漢方薬に対する耐性菌は出現しないことなどを明らかにした。本年度は漢方薬の成分である生薬の抗菌効果について検討した。標準株であるATCC43504株、臨床分離株であるCPY2052株を対象に、18種類の生薬のin vitroにおける抗菌効果を検討した結果、オウレン、ダイオウ、チョウジ、カンゾウ、インチンコウに強い抗菌効果が認められた。また、生薬の濃度としては100μg/ml以上、作用時間としては6時間以上で抗菌効果が認められた。 2、H. pyloriに対する生薬のin vivoにおける効果 H. pyloriに対してin vitroで強い抗菌効果が認められた生薬、オウレン、ダイオウ、チョウジ、カンゾウ、インチンコウのin vivoにおける効果を検討した。C57BL/6マウスにH. pylori CPY2052株を感染させ、各生薬1mg/mlを2週間自由飲水にて投与し、4週間後の胃内菌数を測定した結果、ダイオウには抗菌効果が認められなかったものの、オウレン、チョウジ、カンゾウ、インチンコウに強い抗菌効果が認められた。 以上の結果より、オウレン、チョウジ、カンゾウ、インチンコウはH. pyloriに対してin vitroおよびin vivoにおいて抗菌効果を示すこと、またその効果は抗生物質に対する耐性菌に対しても有効で、耐性菌の出現が認められないことから、H. pylori感染に対する補完代替療法として有用である可能性が示唆された。
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