研究課題
基盤研究(C)
Helicobacter pylori(以下H. pylori)は胃炎、胃潰瘍、胃癌、MALTリンパ腫など、胃十二指腸疾患の原因菌であることが知られている。近年、これらの疾患に対して、抗生物質による除菌療法を実施することにより治療が可能になってきたが、抗生物質に対する耐性菌の出現が問題となっている。本研究では、H. pyloriに対してエッセンシャルオイルおよび漢方薬が抗菌活性を有するかどうかをin vitroおよびin vivoで検討した。13種類のエッセンシャルオイルを対象にH. pyloriに対する抗菌効果を検討した結果、レモンバーベナおよびレモングラスが強い抗菌活性を示し、薬剤耐性菌に対しても同様の効果を示した。その抗菌効果は濃度および時間依存性でありpH4〜7の条件においてはpHが低い程より強い抗菌活性を示した。また、クラリスロマイシン感受性株をそれぞれの薬剤含有培地にて継代培養した結果、クラリスロマイシン耐性菌は出現したが、エッセンシャルオイル耐性菌は出現しなかった。さらに、マウスにレモングラスを経口投与した結果、胃内菌数はレモングラス投与群では非投与群に比較して有意に抑制されていた。一方、18種類の生薬のH. pyloriに対する抗菌活性を同様に検討した。その結果、黄連、甘草、丁子が1mg/ml以上の濃度で強い抗菌活性を示した。また、これらの生薬をマウスに経口投与した結果、胃内菌数を有意に抑制した。以上の結果、エッセンシャルオイルおよび漢方薬はH. pyloriに対して抗菌効果を示すこと、またその効果は抗生物質に対する耐性菌に対しても有効で、長期使用によっても新たな耐性菌の出現が認められないことが明らかとなり、抗生物質耐性H. pylori感染症に対する補完・代替療法として有用であることが示唆された。
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