研究課題
基盤研究(C)
多成分からなる和漢薬の薬効評価法は単一な物質を測定する従来の方法では限界があり、新しい方法の開発が必要である。発現遺伝子の網羅的解析はこのような目的にかなっていると考えられる。研究者はネフローゼを惹起するピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)が活性酸衰の産生を増加させることを世界に先駆けて報告した。この系は薬剤の開発によくもちいられている。最近、活性酸素により遺伝子発現が調節されていることが判明してきている。そこでPANによる遺伝子発現を網羅的に解析し、変化のあった遺伝子のcDNAを乗せたDNAチップを開発し、これにより和漢薬の薬効を評価することを目的とした。正常ラットPAN処理ラット、の腎臓を用いて、薬剤を投与後45分後から15日後まで、経時的にcDNAライブラリーを作成(クローン数の概算は1000/ライブラリ程度)し、大量シーケンシングし、増減の認められた遺伝子のDNAチップを作成し、発現解析を行った。PAN処理ラット腎臓で特異的に発現変化する遺伝子の例を挙げると、ミトコンドリアの電子伝達系の遺伝子をはじめミトコンドリア遺伝子の増減、クレアチン合成に関与する遺伝子の発現増加が認められた。坑酸化物質メタロチオネインやグルタチオンペルオキシダーゼの遺伝子増加があり、PKCに関連するカルモジュリン2の増加が認められた。血液ではサイトカインの一種であるオステオポンチンの発現増加が見られた。動物実験モデルで変動するmRANの網羅的解析で興味深い結果が得られたが、人間の診断用DNAチップの開発にはラットの遺伝子に相当する人間用DNAチップを開発する必要があり、和漢薬の薬効評価は間に合わなかった。
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