研究概要 |
平成15年度までの研究により、われわれがクローニングしたカテプシン蛋白に対し41%のCrohn病患者が抗体を有し(特に小腸型では75%)、かつカテプシン蛋白添加は小腸上皮細胞の細胞内シグナルを活性化することが明らかとなった。平成16年度は以下のような研究を行ない、その成果を得た。 【方法】(1)小腸上皮細胞創傷治癒に及ぼす効果:コンフルエントに達した小腸上皮細胞株(IEC-6)にレーザーブレードでwoundを形成、培養液中にカテプシン蛋白を添加し24時間培養後、wound areaに集積した上皮細胞数をカウントした。(2)カテプシン蛋白の解析:カテプシン蛋白の全アミノ酸シークエンスを決定し、コンピュータソフトを用いてその構造および機能解析を行なった。 【結果】(1)カテプシン蛋白の添加により小腸上皮細胞の創傷治癒は対照群と比較して平均13%促進されたが、明らかな有意差は得られなかった。(2)カテプシン蛋白には膜貫通ドメインが一箇所認められ、またprotein kinase C (PKC), Casein kinase II (CK II)のリン酸化siteを有していることが判明した。 【考察および結論】カテプシン蛋白は、通常の状態では明らかな腸上皮細胞創傷治癒促進作用を認めなかったが、PKCのリン酸化siteを有していること、ERK1/2 MAPKを活性化することより、PKC→ERK1/2 MAPKの経路を介して腸上皮細胞の創傷治癒に何らかの形で関与している可能性が示唆された。今後、細胞傷害因子存在下におけるカテプシン蛋白の小腸上皮細胞創傷治癒に及ぼす生理作用について検討する必要があるものと考えられた。
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