研究課題
我々は、DCP陽性肝癌例に対するビタミンK投与により1)血清DCPが低下し2)門脈腫瘍塞栓の発生率が有意に減少し3)予後についても改善傾向をもたらすことを明らかにしてきた。本研究はこのような臨床的に観察されたVitamin K2の肝細胞癌門脈浸潤抑制・予後改善効果についての基礎的機構を検討することで、より効果的な肝癌治療法の開発と個々の患者に最適化した治療システムを構築することを目的とした。まずVitamin K2の生物学的特性を解析するために、in vitroで肝癌細胞にVitamin K2を添加したところ癌際網の細胞周期がG1/G2期で停止した。その作用機序解明のために、Vitamin K2添加後の遺伝子発現プロファイルと50種をこえる転写因子の活性を検討することにより、Vitamin K2添加後の比較的早期にPKA活性があがることを同定した。逆にPKA活性の阻害剤を用いることでVitamin K2の細胞増殖抑制作用が打ち消されることから、Vitamin K2はPKAの活性をあげることにより癌細胞に対するその生物学的特性が発揮されている可能性が示唆された。さらにVitamin K2の直接の細胞内標的の探索として、pull-down法とmass-spectrometryを用いてVitamin K2に結合する細胞内蛋白の同定を試みたところ、Vitamin K2は17hydroxysteroid dehydrogenaseと結合しその活性を修飾しestrogenの作用に影響を与えることが明らかとなった。今後これらの標的分子の活性状態を検討することでVitamin K2の薬効の予測、あるいは新たな発癌の化学予防法の開発につなげられる可能性が示された。
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