研究概要 |
本研究は従来,脳相と腸相に分別して理解されていた栄養素経口摂取時のインスリン分泌について,今まで知られていない,腸管吸収前の栄養素の胃内存在自体に対する神経性感知の観点から,消化管 膵島枢軸(enteroinsular axis)の一部を明らかにするものである. 昨年度は,胃内腔粘膜側でのグルコース接触と胃静脈側へのグルコース出現のいずれに神経性グルコース認識の主体があるかを,胃粘膜グルコース塗布又は胃内注入時と胃静脈系グルコース(G)注入時の迷走神経胃枝の求心性電気活動を電気生理学的に検討し,神経性胃-膵島連関生理学的存在意義を明らかにしようとした.その結果,urethane・α-chloralose麻酔ラットの胃大湾側の静脈系周辺の奬膜下に各種濃度のG液を注入すると迷走神経胃枝求心性電気活動は明らかに減少することが判明した. そこで,今年度はこの胃静脈系グルコース出現情報が迷走神経膵臓枝の遠心性電気活動に与える影響を検討したところ,これを促進することが判明した. 一方,胃内グルコース液注入時の迷走神経胃枝の求心性電気活動については,従来胃伸展性求心性活動の関与も否定できない成績を得ていたが,今年度はこの点についても検討を進めた.その結果,胃内G液注入法に工夫を加え,胃内G液注入が迷走神経胃枝求心性電気活動を増加させ,さらに迷走神経膵臓枝の遠心性電気活動を促進することを見い出した.(以上の成績については現在論文投稿準備中である). このような,胃内グルコース出現時の神経性グルコース認識機構に関する,当初の計画にあった,生化学的背景機序の解明は,この研究期間内に十分に行うことが出来なかった.
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