研究概要 |
Wilson病は銅の移送障害のため余剰銅が種々の臓器に沈着し様々な臨床症状を呈する常染色体劣性遺伝性疾患である。本疾患における遺伝子型臨床型関連については、一定の臨床型を呈する特定の遺伝子変異は存在しないとされてきたが、われわれは変異により生じる蛋白構造変化と臨床型関連につき着目し、2つの疾患起因性変異のうち、少なくとも1つがmissense変異の群(M型)と変異2個ともがtruncated proteinとなるようなinsertion,deletion,splice site変異,nonsense変異からなる群(T群)の2群に分類し臨床的に検討したところ有意にT群において劇症肝不全の発生が高いことを見出した。更に従来よりキレート剤を服用し、一旦は病勢が落ち着いても、数年単位で病変が進展し最終的には不幸な転帰をとる患者(キレート剤無効群)の存在が言われているが、我々の施設においても同様な症例を経験し、それらの遺伝子解析の結果ではT型であり、臨床型との間に関連が疑われた。これらより、本研究では、遺伝子型とキレート剤治療効果につき検討することを目的とした。昨年度時点で臨床経過を追うことができた。9家系11症例の検討ではT型がM型に比べてキレート剤内服下でも血小板減少が進みやすく、ALTも変動しやすい傾向が認められたが、本年度は更に4家系7症例を追加し、検討したところやはり同様の傾向が認められた。
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