研究概要 |
コア蛋白を有するPPARα(+/+)マウスは生後12ヶ月頃より肝腺腫が出現し,18〜22ヶ月には腺腫内に癌が出現してくる.解析途中であり十分な検討とはいえないが,生後15ヶ月までの観察結果でコア蛋白を有するPPARα(-/-),PPARα(+/-)マウスには肝腫瘍の発生は全く見られなかった. 肝細胞の増殖を表すcyclin D1,CDK4,PCNAなどの発現はコア蛋白を有するPPARα(+/+)マウスで著明に増加していたが,コア蛋白を有するPPARα(-/-),PPARα(+/-)マウスではコア蛋白を有さないコントロールマウスとほぼ同様であった.一方,アポトーシスを表すTUNEL陽性細胞数,caspase3活性はどのマウスでも大きな変化がなかった. 今回の検討ではペルオキソームはコア蛋白を有するPPARα(+/+)マウスで著明に増加していた.一方,コア蛋白を有するPPARα(-/-),PPARα(+/-)マウスではコア蛋白を有さないコントロールマウスとほぼ同様であった.コア蛋白を有するPPARα(+/+)マウスはペルオキシソームの増殖を認め,PPARαが持続的に活性化されていることが示唆された.一方,コア蛋白を有するPPARα(+/-)マウスは,PPARαが存在するにもかかわらず,その活性化がみられなかった. 今回行ったPPARαノックアウトマウスとの掛け合わせ実験により,コア蛋白トランスジェニックマウスにおける肝癌発症にPPARαが極めて重大な役割を果たしていることが判明した.その機構として,PPARαの持続的活性化による肝細胞の増殖亢進,アポトーシスの相対的減少,発癌遺伝子産物の持続的な発現増加,ペルオキシソーム増殖が観察された.今後の解析を通じてPPARαの持続的活性化がコア蛋白トランスジェニックマウスにおける肝発癌機構の一つであることが確定されれば,C型慢性肝炎・肝癌患者におけるPPARαの持続的活性化の有無を調べる必要がある.もしC型慢性肝炎患者においてPPARαの活性化が確認されれば,PPARαの活性化を抑制する方法の開発が肝癌発症予防に役立つものと期待される.
|