研究概要 |
胎生14日のマウス胎児肝から細胞を分離し、MACSビーズを用いて血液成分およびその前駆細胞を除いた後、肝幹細胞を分離、培養した。肝幹細胞は胎児肝の約10%を占め、培養にてコロニーを形成した。培養早期の肝幹細胞は、肝細胞(albumin,・1AT, AFP)、胆管細胞(CK19)、膵内分泌細胞(Glut-2,insulin, Pdx-1,Pax4,Isl-1,Ngn3)由来の遺伝子を発現し、多分化能を備えていた。培養経過とともに、肝細胞、胆管細胞遺伝子の発現は維持されていたが、膵由来の遺伝子の発現は低下した。肝幹細胞にEIA, EIB, E3遺伝子を欠失させたアデノウイルスに、CAGプロモーター下にラットHNF-4α2遺伝子を組み込んだHNF-4アデノウイルスベクター(AdHNF-4)を感染させ、HNF-4遺伝子を導入させた。その結果、HNF-4蛋白を発現した肝幹細胞においてApoA1,ApoC3 mRNAなどの脂質代謝を制御する遺伝子や薬物代謝を制御するPXRの発現増加が認められた。以上の結果は、肝幹細胞においても成熟肝細胞と同様、HNF-4遺伝子導入によって肝細胞への分化が促進されることを示している。 ラット肝細胞を細胞外マトリックス(コラーゲン、EHSゲル)上で培養し、細胞外マトリックスが肝細胞の遺伝子発現に与える影響をcDNAマイクロアレイを用いて網羅的に検討した。その結果、EHSゲル上で培養ざれた肝細胞において、PI(4,5)P2 phosphatase mRNAやcofilin mRNA等の細胞骨格に関連した遺伝子の発現変化がみられた。EHSゲル上の肝細胞ではPI(4,5)P2の発現は低下し、F-アクチンは脱重合していた。EHSゲル上で培養された肝細胞にPI(4,5)P2を添加すると、アクチンの重合が認められるとともに、albuminの発現は低下した。一方、コラーゲン上で培養された肝細胞に、アクチンの脱重合を誘導するgelsolinを添加すると、アクチンの脱重合、albuminの発現増加が認められた。以上の結果は、EHSゲルは、PI(4,5)P2の低下を介してアクチンの脱重合を促進し細胞骨格を変化させることで肝細胞特異的機能を発現維持されることが証明された。
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