胎生14日のマウス胎児肝から肝前駆細胞を分離、培養し、HNF-4α2遺伝子を組み込んだHNF-4アデノウイルスベクター(AdHNF-4)を感染させ、HNF-4遺伝子を導入させた。Dimethylnitrosamine (DMN)を腹腔内に週3回投与することで肝硬変マウスを作成した。DMN投与開始2週間後に、HNF-4遺伝子またはLacz遺伝子を導入したGFP-トランスジェニックマウス由来の胎児肝前駆細胞を尾静注し、その治療効果を検討した。マウスの生存率をKaplan-Meierにて検討したところ、コントロール群とLacz群には有意差を認めなかったが、コントロール群とHNF-4群間において、生存率に有意の改善が認められた。細胞移植4週間後の宿主肝にLaczならびにHNF-4遺伝子導入細胞群ともにGFPにより発光する胎児肝前駆細胞を確認することができたが、両群間において移植細胞数に明らかな差異は認められなかった。しかしながら、肝内のHNF-4mRNAならびにApoAl mRNAをNorthern blotにて検討したところ、HNF-4遺伝子導入細胞群において遺伝子発現の増強が確認された。 DNAマイクロアレイによる検討から、Engelbreth-Holm-Swarm (EHS) gel上で培養した肝細胞において、PIP_2 phosphatase mRNAやcofilin等の細胞骨格に関連した遺伝子の発現変化が認められた。Northern blotにてEHS gel上の肝細胞は、PIP_2 phosphatase mRNAが増加し、PIP 5-kinase mRNAが低下していることより細胞内PIP_2の減少が示唆され、事実PIP_2の発現はEHSgel上の細胞で低下していた。EHS gel上の肝細胞ではactinが脱重合していたが、collagen上の肝細胞ではactinは重合していた。EHS gel上の肝細胞にPIP_2を添加するとactinの重合が増加する一方で、albumin mRNAの発現は低下した。また、EHS gel上の肝細胞に対してHNF-4ならびにHNF-1 siRNAを添加すると、細胞骨格や形態に変化を認めなかったがalbumin mRNAの発現は低下した。
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