研究概要 |
平成15年度の実績報告 研究代表者の荒木克夫が、実験計画の立案、研究の実施、結果の評価、および報告論文の作成にあたっている。 1,我々は炎症性腸疾患において、胆汁酸が非常に重要な役割、特に非常に強い腸管上皮膜透過性亢進作用を有する事を見出し、報告してきた。平成15年度においてはこの研究を更に推し進めて、胆汁酸の有する強い腸管上皮膜透過性亢進作用の細胞内シグナリングの検討を終えた。この検討は主にin vitroに単層Caco-2細胞のTEER(trans-epitherial electronic resistance)を測定する事により評価した。これらシグナルの伝達は、MAP kinase, ERK, protein kinase C, cyclooxygenase, P13K, MLCK, ERK1/2, PLA2, NADH,の細胞内酵素蛋白質の活性化、更にはフリーラジカルを介している事を初めて見出した。この結果は現在投稿中である。 2,更に我々は炎症性腸疾患の病因として、食事中に含まれる大量の硫酸化多糖体に注目している。動物の炎症性腸疾患モデルはこの硫酸化多糖体を経口投与することで惹起される事を考えると、硫酸化多糖体の生体内代謝解析は炎症性腸疾患の病因に係わる大きな意味を持つ。しかし現在まで硫酸化多糖体の生体内代謝、動態はほとんど分かっていない。そこで我々は自身で開発した硫酸化多糖体の2-amynopiridine標識法を用い、高速液体クロマトグラフィーにより検出する技術により硫酸化多糖体の生体内、特に腸管内における代謝について検討し、現在までに貴重な知見を得ている。すなわち硫酸化多糖体は腸管上皮細胞内に急速に取り込まれ、非常に速いスピードで代謝を受けること、更に硫酸化多糖体は硫化水素などの有害代謝物に変化しないが、細胞周期をG2期で停止させ、細胞障害を惹起させることを今回初めて見出している。この結果は現在投稿中である。 3、本年度は腸内細菌の一種であるClostridium butyricumの産生物質を用いて、動物の大腸炎モデルに対する治療効果の確認を終了した。この結果は現在投稿中である。この産生物質は、研究代表者である荒木克夫が農林水産新産業技術開発事業特別研究員時代に開発を進めたものである。 これら新知見を元に、引き続き動物実験による検討を加え、炎症性腸疾患の病因究明を進めたい。
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