Toll受容体関連分子MD-2の発現制御からみた消化管炎症性疾管の病態解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590647
• 研究機関: 島根大学(医学部)
• 研究代表者: 石原 俊治 島根大学, 医学部, 講師 (80263531)
• 研究分担者: 木下 芳一 島根大学, 医学部, 教授 (30243306)
• キーワード: 自然免疫 / toll-like receptor-4 / MD-2 / 炎症性腸疾患 / H.pylori感染

研究概要

現在、TLR-4の共役分子であるMD-2が消化管の炎症性疾患、特にH.pylori感染症や炎症性腸疾患の病態にどのように関連しているかを分子生物学的手技を用いて検討している。今年度の研究によって、ヒト消化管粘膜では炎症が惹起されるとTLR-4とMD-2はいずれも発現が増強され(特に上皮細胞において)、LPSに対して機能的に応答することが明らかとなった。特に、MD-2の機能については詳細に検討をおこない、平常時は上皮細胞質内に限局しているTLR-4蛋白がMD-2の発現によって細胞表面に表出され、TLR-4/MD-2複合体を形成することで機能を有することを明らかとした。
さらに現在ではMD-2遺伝子のプロモーター解析についても検討をおこなっている。ヒト末梢血白血球のDNAを用いて、PCRによってMD-2遺伝子の転写開始点から約1kb上流クローニングした。クローニングしたDNA断片をルシフェラーゼアッセイ用にベクターにライゲーションし、種々の因子のMD-2プロモーターの活性に与える影響を検討した。本ベクターをトランスフェクションした消化管上皮細胞を、LPSで刺激してもMD-2プロモーターの活性に影響を与えないが、H.pyloriなどの生菌や炎症性サイトカイン、IFN-gammaなど刺激では有意にその活性が増加することが確認された。これらの結果を踏まえると、消化管上皮細胞では、TLR-4/MD-2発現は炎症によってまず増強され、さらに二次的にLPSに対して感受性を高めて応答している可能性が示唆される。
現在は、種々の上部消化管疾患を有する患者様、あるいはクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患患者様から、十分なインフォームドコンセントを得た後に末梢血白血球を採取して、DNA抽出後にPCRによってMD-2プロモーター領域を増幅し、シークエンスによって同部位のSNP解析などをおこないはじめている。

研究成果

• [文献書誌] Ishimura N, et al.: "Ribavirin increases the expression of type1 interferon receptor in human"Gastroenterology. 124. A776 (2003)
• [文献書誌] Ishimura N, et al.: "BRAF and k-ras gene mutations in human pancreatic cancers"Cancer letters. 199. 169-173 (2003)
• [文献書誌] Dhar DK, et al.: "Expression of regenerating gene I in gastric adenocarcinomas"Cancer. 100. 1130-1136 (2004)
• [文献書誌] Ono M, et al.: "Effect of a gastrin/CCK-B receptor antagonist, S-0509"J.Lab.Clin.Med. 142. 364-371 (2003)
• [文献書誌] Yuki T, et al.: "Expression of midkine and receptor-like protein tyrosine"Aliment Pharm Therapeutics. 18. 106-112 (2003)
• [文献書誌] Fujishiro H, et al.: "Analysis of urgent colonoscopy for acute lower"Digestive Endoscopy. 15. 117-120 (2003)
• [文献書誌] Amano Y, et al.: "Prevalence of reflux esophagitis in patients with duodenal"J.Gastroenterology. 30. 514-515 (2003)
• [文献書誌] Kinoshita Y, et al.: "Review article : Thrapectie approaches to reflux disease"J.Gastroenterology. 38. 13-19 (2003)
• [文献書誌] Hamamoto S, et al.: "9-cis retinoic acid enhances the anti-viral effect of interfero"J.Lab.Clin.Med. 141. 58-66 (2003)
• [文献書誌] Sato H, et al.: "Lafutidine pretreatment causes increase in serum CGRP"J.Lab.Clin.Med. 141. 102-105 (2003)
• [文献書誌] Kazumori H, et al.: "Transforming growth factor-alpha directly augments"Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 286. G508-G514 (2004)
• [文献書誌] Otega CF, et al.: "J.Immunol"Strategic compartmentalization of Tool-like receptor 4. 3977-3985 (2003)