H.pylori感染胃粘膜における宿主の自然免疫応答、特にToll-like receptor4(TLR4)を介したH.pyloriのリポポリサッカライド(LPS)の認識機構について研究をおこなった。ヒトのH.pylori感染胃粘膜では、TLR4の発現が有意に誘導されることをmRNAおよび蛋白レベルで明らかにしたが、免疫染色やLaser capture micro issectionを用いた検討から、TLR4の主な発現局在は上皮細胞や浸潤単核球であった。さらに胃粘膜上皮細胞におけるTLR4の機能を詳細に解析する目的で、TLR4遺伝子とその共益分子であるMD-2遺伝子をAGS細胞に導入してstable transfectantを樹立した。AGS細胞のH.pyloriのLPSに対する応答性はNF-κBとInterleukin-8プロモーターのルシフェラーゼアッセイによって解析した。AGS細胞は恒常的にTLR4を発現しているが、H.pyloriLPSに対しては不応答性であり、TLR4遺伝子を導入した細胞においてもLPSに対しては低応答性であった。興味深いことにMD-2遺伝子の導入によってAGSのH.pyloriLPSに対する応答性が著しく上昇する現象が認められた。これらの細胞におけるTLR4蛋白の細胞内局在をフローサイトメトリーで解析したところ、MD-2遺伝子発現が低い状態ではTLR4蛋白が細胞内に限局しており、MD-2の発現によってはじめて細胞表面受容体として機能することが明らかとなった。最終的にMD-2の発現制御をそのプロモーター解析の面からもおこないH.pylori感染依存的にMD-2の発現が誘導されることも示された。本研究の成果の詳細は2004年のJ Immunol誌に報告した。
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