研究概要 |
本年度は、一般的に論じられているP53,Rb, mycの遺伝子異常に加えて、新たに最近発見された胃癌における癌抑制遺伝子であるRUNX3をRT-PCRによりクローニングし、本遺伝子の遺伝子異常をPCRとオートシークエンサーを用いて検出する系を確立した。また、RNA干渉の手法を用いてRUNX遺伝子をノックアウトすることにより、その膵癌培養細胞を用いて増殖能、転移能の変化を観察している。予備実験の結果では、RUNX遺伝子のノックアウトは細胞形態の変化を引き起こすとともに、細胞増殖を亢進させることが判明した。来年度も引き続き遺伝子の発現コントロールによる癌細胞増殖能、転移能の変化を検討していく予定である。 また、血液中のがん細胞より放出されるmRNAおよびgenomic DNAを抽出し、nested-PCRにより検出する実験系を確立した。k-rasの変異は膵癌において90%以上に変異が認められる。このk-rasの遺伝子変異のあるgenomic DNAの血中濃度を検出することにより膵癌の予後規定因子として有用であるかどうかの確認を行ってゆく。血中k-ras濃度の測定により、膵癌治療開始時の転移予測、膵癌の抗癌剤への反応性の違いについての検討を行っていく。同時に、膵癌の抗癌剤による治療効果判定における膵癌遺伝子異常の血中での検出の有用性についても今後検討を行っていく予定である。
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