研究概要 |
【目的】C型慢性肝炎の病態は免疫反応によると考えられており、その進展にはウイルス特異的なCytotoxic T cell(CTL)レスポンスが重要である。一方最近では樹状細胞(DC)のC型慢性肝炎患者における機能低下が指摘され、C型肝炎ウイルス(HCV)がDCの機能異常を誘発し、ヘルパーT細胞機能・CTLレスポンスを障害していると考えられている。我々はHCV構成遺伝子をDCに導入し、細胞表面マーカー・機能の変化について検討した。【方法】健常成人より末梢血リンパ球を分離し、磁気ビーズを用いてCD14陽性細胞を回収。GM-CSF、IL-4を加えて5日間培養後HCV構成タンパク質(Core, NS2,NS3,NS3-4,NS4A, NS4B, NS5A, NS5B)を含むプラスミドをリポフェクション法にて導入し、コントロールベクターとの間で細胞表面マーカー(HLAclassI, classII, CD40,CD80,CD86,CD81)の発現を比較、また5日間培養後PPD添加し、T細胞と混合リンパ球培養にて機瀧を比較した。 【結果】HLAclassI, classII, CD80の発現は各遺伝子間でほとんど差がなかった。 NS2とNS4導入時CD40及びCD86についてMean fluorescence intensity(MFI)で空ベクターを1とした場合0.7、0.75と低下した。一方PPD特異的T細胞刺激能ではNS4及びNS5Bを導入した場合約60%に低下していた。【結論及び今後の展望】HCV構成タンパク質のうちNS2,NS4,NS5などの樹状細胞への導入により一部の細胞表面マーカー発現が低下し、PPD特異的T細胞刺激能が低下した。これらがC型慢性肝炎患者における樹状細胞機能低下と関与している可能性が示された。この機序について、今後細胞内情報伝達系及びプロテアゾーム系の変化を中心に検討を行う。
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