研究概要 |
【目的】C型慢性肝炎の病態は免疫反応によると考えられており、その進展にはウイルス特異的なCytotoxic T cell (CTL)レスポンスが重要である。一方最近では樹状細胞(DC)のC型慢性肝炎患者における機能低下が指摘され、C型肝炎ウイルス(HCV)がDCの機能異常を誘発し、ヘルパーT細胞機能・CTLレスポンスを障害していると考えられている。我々はHCV構成遺伝子をDCに導入し、細胞表面マーカー・機能の変化について検討した。【平成16年度までの結果】健常成人より末梢血リンパ球を分離し、磁気ビーズを用いてCD14陽性細胞を回収。GM-CSF、IL-4を加えて5日間培養後HCV構成タンパク質(Core, NS2,NS3,NS3-4,NS4A, NS4B, NS5A, NS5B)を含むプラスミドをリポフェクション法にて導入し、コントロールベクターとの間で細胞表面マーカー(HLAclassI, classII, CD40,CD80,CD86,CD81)の発現を比較、また5日間培養後PPD添加し、T細胞と混合リンパ球培養にて機能を比較した。HLAclassI, classII, CD80の発現は各遺伝子間でほとんど差がなかった。NS2とNS4導入時CD40及びCD86についてMean fluorescence intensity (MFI)で空ベクターを1とした場合0.7、0.75と低下した。一方PPD特異的T細胞刺激能ではNS4及びNS5Bを導入した場合約60%に低下していた。【平成17年度の方法】平成16年度までと同様の遺伝子導入方法でHCV構成タンパク質の導入、PPD、CD4T細胞の混合リンパ球培養を行い、上清を回収、サイトカインの測定を行った。【成績】NS4導入時にサイトカインの産生パターンはTh1サイトカインであるIFNγ、IL-2がそれぞれコントロールと比べて40%、25%の産生低下を示し、一方Th2サイトカインであるIL-4、IL-10はコントロールと比べて有意な差を認めなかった。【結論】HCV構成タンパク質の樹状細胞に対する遺伝子導入の結果、Th1サイトカイン産生能が低下した。この作用がC型慢性肝炎の病態形成に関与している可能性がある。
|