研究概要 |
【目的】肝細胞癌治療におけるインターフェロン(IFN)サブタイプ選択の必要性を明らかにする為、α2とα8および5-FUとの併用による肝細胞癌株でのアポトーシス誘導の相違について検討した。【方法】肝細胞癌株(Hep3B、PLC/PRF/5)培養上清にIFNα2・α8を1000IU/ml、5-FU10μg/mlを加え培養後アポトーシス定量を行った。JAK/STAT系及びp27^<Kip1>、p21^<Cip1>についてwestern blotting、caspase3・8・9の活性化について比色プロテアーゼアッセイ、ISRE活性化についてルシフェラーゼアッセイで検討した。また、Caspase阻害剤およびIFN情報伝達系とCaspase経路の橋渡し役であるPI3K阻害剤投与による変化についても解析した。【成績】Hep3BはIFN単独でα2に比べα8でアポトーシスが強く誘導された。PLC/PRF/5は、5-FUとの併用でα2よりα8で強くアポトーシスが誘導された。Hep3Bでは5-FUとの併用でcaspase3・8・9の活性化の程度がα2よりα8で高かった。Caspase9阻害剤投与によってCaspase9の活性は低下したが、下流CaspaseであるCaspase3の活性化の程度はわずかであった。一方Caspase8阻害剤の投与によってCaspase8,3いずれの活性も低下し、IFNと5FU併用によるCaspase活性化にはCaspase8経路がより重要であることが明らかになった。PI3Kの阻害によりCaspase9は抑制されたがCaspase8,3は抑制されず、アポトーシスにも変化がなかった。【結論】肝細胞癌株に対しIFNα2とα8はアポトーシスを誘導しその程度及び5-FUと併用での増強効果は細胞株の種類により異なり、これには特にCaspase8の関与が大きいと考えられた。【今後の展開】caspase活性化の違いがIFNα2とα8で認められることが明らかになってきた。今後はこの相違がどのような情報伝達経路を介して生じているのか、IFN情報伝達経路とcaspase活性化の経路の関連を明らかにする。
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