研究概要 |
1.胃癌におけるVEGF-C, VEGF-Dの発現と臨床的重要性 昨年度はヒト胃癌組織におけるVEGF-C、VEGF-Dの発現を免疫組織学的に検討し、腫瘍先進部におけるVEGF-C発現がリンパ管侵襲、リンパ節転移、血管密度と相関することを見出した。一方、VEGF-D発現とリンパ管侵襲、リンパ節転移との間に有意な相関は認めなかった。本年度は胃癌におけるVEGF-C、VEGF-D、Flt-4(VEGF-C, VEGF-Dに対するレセプター)、podoplanin(リンパ管内皮マーカー)の発現を、RNAレベルで定量的に評価するため、内視鏡検査時に採取された生検組織を用い、real-time PCR法で検討した。臨床病理学的事項との相関はVEGF-C, Flt-4,podoplaninにおいて強く認められたが、VEGF-Dでは明らかではなかった。また、podoplaninに対する抗体を用い、リンパ管密度を数値化してVEGF-CおよびVEGF-D mRNA発現との相関を検討したところ、VEGF-C発現は有意にリンパ管密度と相関していた。 2.胃癌細胞株のうちKKLS細胞はVEGFR-3を強発現していることを見出した。VEGF-C/D/receptorシステムがオートクライン的に働くかどうかを検討するため、癌細胞をrecombinant VEGF-CおよびVEGF-Dで処理しDNAマイクロアレイにより癌関連遺伝子の発現に及ぼす影響を観察した。VEGF-C/D処理により、増殖、アポトーシス、血管新生、浸潤、接着等転移に関連する遺伝子の増加が観察された。今後、real-time PCRにてこれらの結果を確認する予定である。 3.VEGF-C遺伝子安定導入株を樹立し、ヌードマウスの皮下(異所性)および胃壁(同所性)に移植したところ、腫瘍増殖速度、転移能の変化は明らかではなかった。VEGF-D遺伝子安定導入株を現在作成中である。
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