1.In vitroにおける酸化ストレスとアポトーシスの評価 本年度はHCVコア蛋白によるデオキシコール酸(DCA)誘導性アポトーシス抑制効果が、DCAに特異的な効果か否かを明らかにする目的で、TNF-α+Actinomycin D誘導性アポトーシスについても検討を行った。DCAと同様にHCVコア蛋白はアポトーシスを抑制することが明らかとなった。また、DCAはミトコンドリアの脱分極を引き起こし細胞死を惹起したが、HCVコア蛋白はミトコンドリアの脱分極を抑制し細胞死を抑制した。経時的な細胞死とアポトーシスの観察からも、HCVコア蛋白はアポトーシスからネクローシスへのswitchingを行うのではなく、細胞死そのものも抑制することが明らかとなった。以上より、平成15年度の研究成果と総合すると、HCVコア蛋白誘導性の酸化ストレスにより酸化的DNA傷害が惹起される一方でMn-SODの発現増強に示されるように抗酸化反応も引き起こされ、またHCVコア蛋白はアポトーシスを抑制するがこの酸化ストレスの誘導とアポトーシス抑制効果は独立した調節機構であることが明らかとなった。 2.鉄過剰食投与によるHCVトランスジェニックマウス(TgM)での肝腫瘍の発生 HCV全遺伝子が組み込まれたTgMと同系のC57BL/6マウスにそれぞれ鉄過剰食、普通食を与える4群を設定して肝内の酸化ストレス、ミトコンドリア障害、肝腫瘍発生について比較検討した。鉄過剰食投与のTgMは6ヶ月目以降Zone IIIのmicrovesicular steatosisを含む著明なsteatosisやミトコンドリアの超微形態異常や機能障害を認め、12ヶ月以降では肝内脂質過酸化物や8-OHdGの増加を認め、45%に肝腫瘍の発生を認めたが、他の3群では肝腫瘍を認めなかった。
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