研究概要 |
前年度までの研究によりPCRレベルで確認できる程度のHCVタンパク発現にC型慢性肝炎に匹敵する程度の鉄沈着を加えることによりヒトに類似した肝発癌を起こすマウスモデルの作成に成功した。鉄負荷によりHCV TgMのtransgeneの発現が亢進しないか否かを確認するため、鉄負荷を行わなかったHCV TgMと鉄負荷を行ったHCV TgMのtransgeneの発現をreal time PCRで比較検討したが、両群に差を認めなかった。次にHCV TgMには肝発癌を促進させる鉄代謝異常が存在するか否かについて検討した。鉄負荷を行わない通常餌で飼育したECV TgMと同系のC57BL/6マウスの肝内鉄濃度を比較したところ6ヶ月目、12ヶ月目でHCV TgMのそれが有意に高値であった。さらに鉄負荷を行ったC57BL/6マウスの肝内鉄濃度は6ヶ月目以降にはplateauに達したが、HCV TgMでは鉄負荷期間に応じて肝内鉄含有量が増加した。これらの成績はKCV TgMにおいて鉄代謝障害が存在することを示すものである。 さらに鉄吸収抑制分子であるhepcidinのmRNA量を測定したところ、HCV TgMではhepcidin発現量が低下しており、HCV TgMの鉄代謝障害にはhepcidinが関与していると考えられた。hepcidinの発現を調節する肝組織内の炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF-α)の発現量をHCV TgMとC57BL/6マウスで比較検討したが、両者には差を認めず、hepcidinの発現低下にはHCVタンパクが関与していると考えられた。
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