Tet-off遺伝子発現システムによるHCVコアタンパク発現細胞(Huh-7)を用いてデオキシコール酸(DCA)の刺激下にHCVコアタンパク発現時と非発現時の酸化ストレスとアポトーシスについて比較検討した。コアタンパクにより有意な活性酸素の上昇を認め、酸化的DNA障害のマーカーである8-OHdGが蓄積した。その一方でDCAによるアポトーシスを抑制した。その抑制機序としてコアタンパクはBcl-2 familyのなかでもproapoptoticなBaxの発現を抑制し、一方でantiapoptoticなBcl-xLの発現を7t1進させた。その結果としてミトコンドリアからのcytochrome Cの遊出が抑制され、下流のcaspase 9と3が抑制された。このようなに酸化的DNA障害の誘導とアポトーシスの抑制はコアタンパクによる肝発癌機序を考えるうえで興味深い知見であったが、コアタンパクによる酸化ストレスのマグニチュードは小さく二次的な酸化ストレスの増強が重要と考えられた。そこでC型肝炎の病態の特徴のひとつである鉄過剰に注目し、HCV全遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウス(HCV TgM)に鉄過剰食を与え、C型慢性肝炎患者に近似した肝内鉄濃度をもつ動物モデルを作成した。本TgMは鉄負荷6ヶ月目にはZone IIIのmicrovesicular steatosisを混じる著明な肝脂肪化とミトコンドリアの超微形態異常ならびに脂肪酸代謝障害を認め、12ヶ月目には肝内脂質過酸化物と8-OHdGの蓄積を伴い、肝細胞癌を含む肝腫瘍を45%に認めた。以上の成績はヘモクロマトーシスとは異なる軽度の鉄過剰であってもC型肝炎の肝発癌に関与することを示しており、その発癌機序にはC型肝炎ウイルスタンパクに誘導される酸化ストレスに加えて鉄による酸化ストレスの増強が重要であることを証明した。
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