研究概要 |
1、免疫組織染色により正常消化管における炭酸脱水酵素-関連蛋白(Carbonic anhydrase-related protein;CA-RP) VIII,X,XIの局在を検討した。その結果、CA-RP VIIIの発現は胃腺管底部の主細胞とMeisner神経叢およびAuerbach神経叢の神経細胞に発現が認められた。CA-RP Xの発現は上皮細胞には認められず、壁在神経叢細胞にのみ認められた。CA-RP XIは消化管の粘膜被蓋細胞にひろく発現していたが、壁在神経叢細胞には発現が見られなかった。 2、CA-RP VIIIおよびXが壁在神経叢細胞に発現していたことより、消化管間葉系腫瘍(Gastroint estinal stromal tumor;GIST)におけるCA-RPの発現を免疫組織染色にて検討した。その結果、胃由来のGIST26例中、CA-RP VIIIが14例(54%),CA-RP XIが24例(92%)に発現していた。一方、CA-RP Xの発現は見られなかった。なお、GISTの由来とされるカハール介在細胞ではいずれのCA-RPも発現が認められなかった。 3、GISTの培養細胞株(GIST-T1)にcDNAを導入し、CA-RP XIの強発現株(T1-XI)を作製した。In vitroの検討でT1-XIはwild typeのT1に比べ、増殖能およぴ浸潤能が増強していた。また、T1およびT1-XIにおけるCA-RPの発現を免疫染色で検討した結果、CA-RP XIの発現の増強とともに、T1では核周囲に分布していたCA-RP VIIIの発現がT1-XIでは細胞質にびまん性に認められた。 4、以上の結果より、GISTではカハール介在細胞からの腫瘍化の過程においてCA-RP、特にCA-RP XIの発現増強がみられ、発現の増強したCA-RP XIがGIST細胞の増殖および浸潤に何らかの役割を担っていると考えられた。また、CA-RP VIIIとXIは相補的な役割を持つ可能性が示された。
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