研究概要 |
経口的な脂肪の過剰摂取が大腸の発癌の重要な要因であることは疫学的に明らかにされているが,その機序を解明するためのin vivoの研究をするための有用なモデルが少ない.大腸の発癌実験モデルの多くは癌が粘膜内にとどまっており,アゾキシメタン単独投与でもアベラントクリプト,大腸腺腫,稀に粘膜内高分化腺癌,の発生にとどまる.今回の研究結果から,アゾキシメタン投与ラットに中性脂肪を長期過剰投与することで粘膜内癌から浸潤癌に伸展させることが可能となった.この実験系は中性脂肪の単独投与によるものではないが,他の発癌因子との相互作用で大腸腺腫から高分化腺癌の浸潤癌が発生するという実験系である.大腸発癌と脂肪の過剰摂取との関連はその多くは疫学的なものであり,それらを動物実験モデルにあてはめて発癌機序の解明と発生予防について検討することは意義のあるものと考えられる.さらに腺腫⇒粘膜内癌⇒浸潤癌と伸展することからadenoma-carcinoma sequenceの動物モデルのひとつとしてその機序の解明は重要と思われ,次年度の研究課題としたい.
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