研究課題
基盤研究(C)
15デオキシΔ^<12,14>-プロスタグランジン12(15d-PGJ2)は、核内レセプターであるPPARγの生体内リガンドであり、サイトカイン・LPSによるNF-κB活性化の阻害やcyclo oxygenase2 (COX-2)活性の抑制を介して抗炎症作用を持つことが知られている。リセプターであるPPARγは、脂肪細胞の分化に必須の因子である他、肝臓、腸、血管内皮、血液細胞などでもその発現が確認されている。最近、15d-PGJ2が種々の癌細胞や血管内皮細胞対して増殖抑制効果さらにはアポトーシス誘導能を持つことが報告された。本研究では、肝細胞癌に対する15d-PGJ2の抗腫瘍活性を明らかにする目的で実験を計画した。ヒト肝癌細胞HuH7に対して種々の濃度の15d-PGJ2を添加し、24時間培養後MTT assayによりCell viabilityを測定した。さらに、TRAIL(1〜5ng/ml)、TNF-α(50〜200ng/ml)と15d-PGJ2を併用することで細胞傷害活性が増強されるか検討した。MTT assayの結果、HuH7のCell viabilityは15d-PGJ2濃度依存性に低下した。Cell viabilityが対照の80%に低下する濃度の15d-PGJ2(25μM)存在下で、単独では全く細胞障害性を示さない濃度のTRAIL(1ng/ml)、TNF-α(100ng/ml)をそれぞれ併用添加するとCell viabilityは約20%にまで低下した。実際にアポトーシスが誘導されているかFlow cytometryによるhypodiploid DNA検出を行ったところ、15d-PGJ2(25μM)単独で17%、TRAIL(1ng/ml)の併用で81%、TNF-α(100ng/ml)の併用で75%の細胞にアポトーシスが誘導されることが解った。また、TRAIL、TNF-αは細胞生存シグナルの一つであるNF-κBを活性化することから、TRAIL、TNF-αの存在下において、15d-PGJ2がNF-κB活性化に与える影響をゲルシフト・アッセイ、NF-κB結合シス配列を用いたルシフェラーゼ・アッセイにより検討した。その結果、15d-PGJ2(25μM)を添加することでTRAIL TNF-αによるNF-κBのDNA結合能や転写活性が有意に抑制されることが明らかとなった。さらに、15d-PGJ2により、癌細胞の生存・増殖シグナルの一つであるSTAT3の活性化(リン酸化)も抑制されることが解った。よって、15d-PGJ2は肝癌細胞の生存・増殖シグナルを抑制することで、肝癌細胞のアポトーシス感受性を増強することが示唆された。
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