骨髄由来の幹細胞は成熟肝細胞に分化し得ることが知られており、様々な肝障害の肝再生において重要な役割を担っていると考えられている。今回我々は、マウスの化学肝発癌モデルを用いて、骨髄由来の幹細胞が肝細胞癌の発生に関与するかを検討した。 雄のbeta-galactosidase(beta-gal)トランスジェニックマウスの骨髄を同系の雌マウスに移植した。diethylnitrosamine/Phenobarbital (NDEA/PB)を1年間投与することにより肝癌を誘発した後、肝組織をx-gal染色、免疫組織染色、Fluorescence in situ hybridization(FISH)法にて検討した。レシピエントマウスの40%が生存し、多発肝細胞癌が発生した。beta-gal陽性の成熟肝細胞はNDEA/PB処理マウスにおいて散在性にクラスターとして認められた。一方、NDEA/PB無処理の群においてはbeta-gal陽性の肝細胞はみられなかった。NDEA/PB処理マウスでみられたbeta-gal陽性の成熟肝細胞は、FISH法においてもY染色体が陽性であった。しかしながら肝細胞癌は全てbeta-gal、Y染色体ともに陰性であった。また、beta-gal陽性の成熟肝細胞はCD34、alpha-fetoprotein染色は陰性であった。 我々のモデルにおいて、骨髄由来の肝幹細胞は肝細胞癌発生において明らかな関与は認められなかった。
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