研究概要 |
虚血ストレスとc-Ablやp53との関連が報告されているが、c-Abl特異的阻害剤STI571によるヒト肝がん細胞株における細胞増殖実験、アポトーシス実験、細胞周期解析。MAPKs、c-Abl、CDKs、p27、p21、p53などのウエスタンおよびリン酸化抗体を用いたブロッティングを行ない、以下の結果を得た。肝がん細胞株ではp53遺伝子に変異のある未分化がんや低分化がん細胞では、c-Ablの発現とチロシンリン酸化活性が高く、STI571によりそれらの細胞増殖能は著明に抑えられた。その効果は、MAPK系の抑制ではなく、p21やp27の再活性化による細胞周期調節によると考えられた。STI571はすでに慢性骨髄性白血病やGISTにて臨床応用されているため、他の治療のない肝細胞癌に対して、現時点で試みられるべき治療の選択肢の一つになりうる可能性が考えられた(J Clin Endoc Metab 88:5044)。次に脱アセチル化機序によるエピジェネティックな変化を明らかにするため、HDAC阻害剤を用いたピストン脱アセチル化酵素の癌群、非癌群における発現をマイクロダイゼクション技術を用いて、Taqman PCRにて現在、解析中である。ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)のp53蛋白のHAT活性化抑制作用を、HDAC阻害薬の1つであるdepsipeptideを用いることにより、導入p53遺伝子はじめとする分化遺伝子の転写を亢進させて、それがp53遺伝子治療抵抗性を解除することを証明した(J Clin Endoc Metab 87:4821-4824)。また虚血耐性を有し放射線抵抗性や抗癌剤抵抗性を示す癌のNF-kB阻害薬などによる分子標的治療や遺伝子治療が有効である可能性を証明した(J Clin Endoc Metab 89:410-418,Clin Cancer Res 10:6821,Gene Therapy in press)。
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