本研究では、転移や他臓器浸潤を認めた臨床的に高悪性GIST 10例とそれらを認めない低悪性GIST 20例の計30例を対象にcDNAアレイを用いて遺伝子発現を検討した。cDNA arrayで得られた遺伝子発現データよりクラスター解析を行ったところ、高悪性GISTにおいて発現の上昇や低下が顕著な遺伝子群を同定することができた。この結果は、cDNA arrayによる遺伝子発現解析が、GISTの悪性度診断にも有用である可能性を示唆している。 高悪性GISTにおいて発現の上昇が顕著であった遺伝子群にはVEGF遺伝子とbcl-2遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子はGISTの悪性化に関与し、悪性度診断に有用であると考えられた。我々の検討でも免疫染色にてBcl-2の発現を検討したところ、30例中16例(53%)において陽性で、そのうち高悪性GIST 10例では、9例に発現亢進を認めた。この他にも、Bcl-2の発現は良性群の55%(11例中6例)に比べ、悪性群では9例全例で発現を認めたとの報告もあり、過剰発現のメカニズムは明らかではないが、Bcl-2の過剰発現によるアポトーシスの抑制がGISTの悪性化に関わっている可能性が示唆される。VEGF受容体やBcl-2を抑制する薬剤は抗腫瘍効果が認められており、これらの薬剤が今後、高悪性GISTの治療にも有用である可能性がある。 30例の胃GISTにおけるMSIを検討した。GISTの診断に関して、検索に用いる抗体の種類や数により診断が異なってくる狭義のGISTの定義に問題が指摘されている。今回の検討では、KitあるいはCD34がび慢性に陽性のGIST30例を対象とし、α-smooth muscle actin、desmin、S-100が各3例で一部陽性であった。MSIの検討の結果、MSI-Hは認めず、3例においてMSI-Lを認めるのみであった。また、単独でもMSI-Eの高感度マーカーとされるBAT26で異常を認める症例はなかった。
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