1)Proton pump inhibitor (PPI)によるBarrett粘膜におけるChemoreventionの可能性を、生検材料を用いて免疫組織学的に検討を行った.PPI投与前と投与6ヶ月後を比較すると、細胞増殖因子であるCOX-2の発現は有意に低下し、増殖能マーカーであるKi-67の発現も有意に低下した。またBarrett粘膜を特徴づける腸上皮化生について投与前後で検討したが、腸型形質転写因子のCDX-2の発現は有意に低下し、腸型ムチンのsulfo-Le^aの発現は低下傾向を示した。コントロールとしてHistamin2 receptor antagonist (H2RA)投与前後で検討したが、COX-2、Ki-67、CDX-2、sulfo-Le^aの発現には有意な変化がみられなかった。PPI投与によりCOX-2の発現低下が細胞増殖能の低下をきたし、また腸型形質転写因子のCDX-2も低下すると考えられ、PPIにはCOX-2とCDX-2の発現を阻害する作用があると推測された。COX-2とCDX-2の発現にはともにp38 MAPK pathwayが関与すると云われているため、PPI投与前後でPhospho-p38の発現を検討したところ、上皮細胞と間質細胞におけるPhospho-p38の発現がともに投与前後で有意な低下を示した。このことから、PPIはp38MAPKを介してCOX-2、CDX-2の発現を抑制して、細胞増殖能を低下させ、腸上皮化生を抑制する作用を有すると推測された。
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