研究概要 |
1.目的 潰瘍性大腸炎(以下UC)患者におけるaberrant crypt foci(ACF)の陽性率、数などを解析し、発癌のバイオマーカーとしての有用性を検討する。また、ACFの遺伝子解析を行い、その前癌病変としての意義を検討する。 2.方法と結果 (1)UC患者におけるACFの観察と病理組織学的解析 潰瘍性大腸炎患者を対象に、既報(N Engl J Med,1998)に従い拡大内視鏡を用いてACFを観察したところ、非UC患者のACFに比べてメチレンブルーに淡く染まるACFが観察された。病理組織学的には、核の腫大、disorientationなどを呈する、いわゆるdysplastic ACFが大部分であった。ACFの個数は、健常人では平均1.5個であったのに対し、dysplasiaを伴わないUC患者では平均5.7個と多く、dysplasiaを有するUC患者では平均12.9個とさらに増加していた。 (2)UC患者におけるACF, dysplasia,癌におけるhypermethylationの解析 UC患者のACF、dysplasia及び癌におけるp16,ARF, CSPG2,ER(estrogen receptor)などの遺伝子のメチル化の有無をBisulfite法により検討したところ、いずれにおいても50〜75%と高率にメチル化が認められた。 (3)UC患者のACF,dysplasia,癌におけるK-ras,APC,p53,β-cateninなどの解析 2-step PCR RFLP法によりK-ras遺伝子を検討したところ、いずれにも陽性率は20%以下であった。Truncation assayによりAPC変異の有無を検討したところ、いずれも変異は認められなかった。β-cateninの免疫組織染色を行ったが、いずれもその蓄積は認められなかった。 (4)UC患者のACF,dysplasia,癌におけるp53変異の解析 SSCP法により、ACF,dysplasia,癌のp53変異を検討したところ、それぞれ0%,60%,50%であった。 3.結論 UC患者のACFでは、p16などのメチル化が高率に認められた。Dysplasiaを有するUC患者では、ACF数が有意に多く、発癌のバイオマーカーになりうることが示唆された。
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