研究課題/領域番号 |
15590675
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
荒川 哲男 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60145779)
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研究分担者 |
藤原 靖弘 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (40285292)
樋口 和秀 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20218697)
富永 和作 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80336768)
渡辺 俊雄 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50336773)
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キーワード | 大腸癌細胞 / 胃癌細胞 / 抗癌剤 / 遺伝子治療 / 細胞内情報伝達 |
研究概要 |
大腸癌細胞(HT-29細胞)を使用し、細胞内情報伝達機構であるMAP kinase系の活性化についての検討の中で、そのサブファミリーであるJNKの活性化が、細胞増殖時において著明であることを示した。そこで次にJNKの下流に存在する転写因子AP-1が、細胞増殖においても経時的に活性化されてくることが判明した。そこでその選択的阻害性を求めることを目的として、dominant negative mutantの作成を試み、本mutantを組み入れたアデノウイルスが、大腸癌細胞に効率に組み込まれることを確認した後、このウイルスを用いて増殖・アポトーシスに与える影響について検討してきた。その結果、大腸癌細胞増殖はアデノウイルスにより、増殖抑制効果を示し、細胞周期に対してはG1静止に導くことが判明した。次にin vivoにおける効果について検討を行った。ヌードマウスの皮下に大腸癌細胞を移植し、dominant negativeを組み入れたアデノウイルスを局所投与し、その腫瘍体積への変化ならびに組織学的変化、さらには増殖・アポトーシスに関連する細胞周期関連蛋白質発現について検討した。その結果、確実に局所投与による組織発現が認められ、その作用により腫瘍体積の減少、すなわち抗腫瘍効果が示され、腫瘍の増大を有意に抑制した。また、組織学的にも、細胞増殖マーカーであるKi-67染色陽性細胞数の減少が示された。以上のことから、今回作成したdominant negative mutant組み込みアデノウイルスを用いた遺伝子治療は、大腸癌細胞の新たなる治療戦略のひとつとなる可能性が示された。 また、もう一つの代表的消化器癌細胞であるヒト胃癌細胞を用いて、その抗癌剤感受性からみた薬剤耐性化機序の詳細について解析した。親株である感受性株(NUGC3)と耐性化株(NUGC3/5FUL)との間には、抗癌剤である5FUに対する感受性の相違が存在するのみならず、その代謝酵素のひとつであるdihydropyrimidine dehydogenaseの阻害剤を同時添加することによりその感受性の回復が認められ、その回復機序にはDPDが依存せず、thymidine synthaseの遺伝子発現レベルでの抑制機序を介したものであることも判明した。
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