研究分担者 |
富永 和作 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80336768)
樋口 和秀 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20218697)
藤原 靖弘 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (40285292)
渡邊 俊雄 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50336773)
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研究概要 |
骨髄幹細胞移植後に、血液疾患に併在していた自己免疫性疾患の改善の報告もあり、全身免疫系への関与が認識されていた。消化器病領域でも同様に、併存する炎症性腸疾患へも影響するとの報告も存在する。骨髄幹細胞に存在する間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell : MSC)は、骨芽細胞、脂肪細胞などへと分化するが、消化管上皮細胞への分化や傷害組織での基盤となる細胞外基質への変化についての報告はない。そこで、今回炎症性腸疾患のラットモデルであるデキストラン硫酸(DSS)誘発大腸炎に対するMSCの有効性について検討した。MSC群では、食事・飲水量、体重減少、血性下痢の減少を含めた便性状スコアの改善が認められた。コントロール群では約81%までに短縮していた大腸長が、MSC投与群では約83%までに抑制された。直腸ではTNF-α,IL-β,IL-10,COX-2のmRNA発現レベルが、コントロール群に比し、約40%,15%,20%,15%と有意に抑制された。遠位大腸においてもほぼ同様に、抗炎症作用が認められた。 MSCは、骨・軟骨細胞などの非上皮細胞への多分化能を有するだけでなく、強い免疫修飾作用を有する。すなわちT cellの活性化抑制、樹状細胞からのTNF-α産生抑制およびIL-10産生元進、regulatory T cellの増加などを介し抗炎症的に作用する。MSCはDSS誘発大腸炎局所において、TNF-αをはじめとした種々の炎症性メディエーターの抑制を介した抗炎症効果を発揮し,大腸炎症状を軽減する可能性が示された。MSCは細胞培養系で容易に分離・増殖させることができ、自身の抗原性が低いことからヒト組織適合抗原を合わせることなく同種移植が可能であることから、難治性炎症性腸疾患に対する臨床応用への点で意義深いものと期待される。
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