消化器内視鏡所見入力は将来的には、MST(minimal standard terminology)にしたがって行われようとしている。本邦においては各施設間における慣習の差異により所見入力システムそのものの受け入れが困難で、この事実がすなわちMST普及の律速段階であり、現在においてもMSTがほとんど普及していない理由の一つであると推察される。それゆえ、15年度はまず、「汎用性があり自由度の高い日本語の内視鏡所見入力システムの開発に対する重要性」を考えた。MSTを窓口として内視鏡所見を入力するのではなく、MSTを意識しないMSTデータベースシステムの開発を試み、その問題点を内視鏡学会総会にて報告した。前回の結果からシステムの稼動は可能であったが、汎用性を重視しシステムの自由度を第一義に考えるならば、一施設が考案し開発したシステムでは多施設間にて使用する場合に、個々の施設における慣習にそぐわない場合があると考えられたため、我々は次のステップとしてさらに柔軟なシステムの開発を行った。(目的)MSTを根幹としつつ各施設が自由に内視鏡用語を変化させることのできる入力システムを開発し、上部消化管を中心に多施設間で動作と使用性の検証を行う。(方法)MSTをbackground termとして使用することは同様であるが、各施設にシステムを配布する場合の初期設定は最小限の用語間のひも付けにとどめ、施設におけるシステムの管理者が、所見入力システムに不便さを感じた時点で、実際に入力端末上において内視鏡用語の増語や作語、定型文の追加を行い必要に応じてこれらのtermにMSTのひも付けを行い運用する。使用面では、内視鏡画像に生検部位などをマークできる基本ツールを追加するとともに病変図示のためのシェーマも自由に作成できるようにした。自施設内でのシステムの受け入れは、若干の内視鏡用語の変更・追加により良好であった。多施設におけるシステムの運用に関しては現在検証中である。今後、このシステムをベースに音声認識システムにおける辞書作りに取り組みたい。
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