本邦においては各施設間における慣習の差異やMSTのユーザーに予測できないツリー構造により所見入力システムそのものの受け入れが困難であった。15年度はまず、「汎用性があり自由度の高い日本語の内視鏡所見入力システムの開発に対する重要性」を考え、システムを構築した。MSTを窓口として内視鏡所見を入力するのではなく、MSTを通常の内視鏡所見入力システムのbackground termとして起動させ通常の内視鏡語彙にMST用語をひも付けすることによりMSTを意識しない内視鏡所見入力システムの開発を行い、16年度は、実際に運用し、その問題点を見つけさらに改良を付け加えた。当院では内視鏡画像に関しては、1993年よりファイリングシステムを導入し現在では10万件以上のデータが格納されているが、患者情報や所見の記載は紙面で行ってきたためファイリングシステム利用は主に画像参照にとどまっていた。しかし、今回の開発によりMST内視鏡所見入力システムをファイリングシステムと完全に統合し、ある程度統計処理ができることを前提に患者基本情報や個別のデータ入力欄をもうけ、必要項目を直接エクセルにファイルアウトできるように工夫しファイリングシステムのデータベース化を行った。17年度は、このシステムを実際に運用し、その問題点をみつけさらに改良した。 一方、音声入力システムに関しては、検査部位や症状、その他のカテゴリーに基づく階層的単語辞書を構成し、一辞書あたりの語彙数を最適化した辞書をダイナミックに選択することで、探索処理や認識率の向上を目指した。その改良されたシステムを用いて、実際の音読された所見の認識率を検討した。それは、90%以上の認識率を示した。さらに、内視鏡検査が行われる雑音のある場所で同様のことを検討したが、その認識率は減少した。今後、現場での認識率のアップを目指し、改良が必要と考えられた。
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