研究概要 |
ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプター(peroxisome proliferator activated receptor : PPAR)は,核内受容体ファミリーに属する転写因子であり,PPARα,PPARδ,PPARγの3種類のサブタイプが存在している.PPARは各種の細胞で発現しており,分化,増殖,細胞死など各種の細胞機能調節に関与している.消化管上皮細胞でもこれらのPPARサブタイプの発現は認められ,特にPPARγリガンドによる消化管上皮細胞の増殖抑制,細胞死誘導に関してはいくつかの報告がなされている.しかしながら,他の細胞機能におけるPPARの役割については不明の部分が多く,本研究においては,特に,消化管上皮の防御においてPPARが何らかの作用を有しているかどうかについて検討を進めた. TFF(trefoil factor family)は,消化管粘膜の健常性維持,損傷修復において重要な役割を果たしている分泌型の小ペプチドであるが,3種のTFFペプチド(TFF1,TFF2,TFF3)のうち,胃粘膜上皮細胞におけるTFF2の発現が,PPARγリガンドにより強く誘導されることを前年度の研究で見いだしたので,今年度はその詳細な機序について解析を進め,レポータージーンアッセイおよびゲルシフト法などにより,ヒトTFF2遺伝子プロモーター上にPPRE(PPAR応答領域)として機能する配列が存在していることを明らかにした.したがって,ヒトにおいてはTFF2はPPARγの直接的なターゲット遺伝子となっており,この結果はPPARγが,TFF2の発現調節を介して胃粘膜防御システムの中で重要な役割を果たしている可能性を示唆している.
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