研究課題
複雑なネットワークが想定される粘膜防御能調節機構の解明を目指し、神経網形成を促す因子の消化管における分布と機能について形態学的および生化学的検討を行い、以下のような結果を得た。1)7週齢と52週齢のWistar系雄性ラットの消化管粘膜における神経分布を比較したところ、特に胃粘膜における粘膜固有層で、calcitonin-gene related peptide (CGRP)含有神経線維の有意な減少を認めた。全神経線維の分布を確認するため用いたprotein G product9.5に対する染色性には、2群間で大きな差異はなかった。このことより、ある種の神経線維の割合は加齢により変化することが明らかとなった。2)週齢数の異なるラットより作成した胃組織で粘液代謝に及ぼすCGRPの作用を比較したところ、7週齢ではCGRP受容体を介した特徴的なムチン生合成活性亢進作用が確認されたのに対して、52週齢ではそのような変化は示されなかった。3)同時に、胃粘膜内の一酸化窒素合成酵素(NOS)活性を7週齢と52週齢ラットで比較したところ、後者では著しく活性が低いという結果が得られた。4)以上の結果は、加齢に伴う胃粘膜防御機能の脆弱化を示唆する報告と考え合わせると、週齢による生体内生理活性物質の量的変化に注意する必要性はあるものの、胃粘膜の恒常性を保つという観点からみた場合、神経機能の果たす役割が大きいことを示す重要な所見であると考える。
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