1)培養での肝細胞分化誘導法の確立 コラーゲンゲルサンドイッチ法を用いた初代培養肝細胞培養において、重層時期を変えて培養細胞の肝細胞分化機能を検討したところ、この方法が単に分化維持だけではなく、脱分化した肝細胞を再分化できる培養法であることを見出した。肝細胞が再分化する環境が、幹細胞の肝細胞分化誘導に適している可能性が示唆されたので、造血幹細胞の含有が知られている骨髄から採取した単核球で試みたところ、2週間の培養で、アルブミン産生能獲得が確認された。 2)脾臓SP細胞採取法の確立と細胞特性解析 ラット脾臓では、骨髄以上の存在率でSP細胞を認めた。表面抗原マーカーの陽性率の違いから、脾臓SP細胞は骨髄SP細胞とは異なる細胞集団であることが判明した。 致死量放射線照射マウスにラット脾臓のSP細胞と非SP細胞をそれぞれ移植したところ、非SP細胞移植群は全例死亡したが、SP細胞移植群は約3割が生存し、その血液・骨髄・脾臓にラットの血球細胞を認めた。脾臓SP細胞が血球細胞に分化することが示唆された。 3)脾臓SP細胞の肝細胞分化 脾臓SP細胞と初代培養肝細胞をコラーゲンゲルサンドイッチ法で2週間共培養したところ、培養前に発現していなかった肝細胞特異的マーカーが、培養後には高率に発現していることが確認された。SP細胞と初代培養肝細胞の間にコラーゲンゲルを挟み直接的接触なしで培養しても同様の結果が得られた。このことから、脾臓SP細胞は肝細胞に分化しうることが示唆された。 4)凍結細胞からのSP細胞採取 脾臓から単核球を分離して凍結保存し、2週間後に解凍してSP細胞解析を行ったところ、生細胞に占めるSP細胞の割合が増加していた。SP細胞は凍結ストレスに強いことが示唆され、移植細胞候補として考えたとき、凍結保存が可能であるという有利な特徴を持つことが示された。
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