研究概要 |
昨年度、一昨年度は、ヒト肝星細胞株におけるMMP-1遺伝子プロモーター解析を行い、TNF-alphaによるMMP-1の遺伝子転写調節が転写因子NF-kappaβを介して行われていることをはじめて明らかにした。さらにこのMMP-1遺伝子転写調節が低分子量GTP結合蛋白であるrac1を介して行われていることを明らかにした。ヒト膵星細胞においては、IL-1betaによるMMP-1遺伝子転写機構もrac1を介していることが明らかとなったが、これはNF-kappaβを介して行われていなかった。これらの成果を受けて、本年度はIL-1beta処理群と非処理群間、持続活性型Rhoの遺伝子導入群とMOCKの遺伝子導入群間において、転写因子結合領域に相当するDNA配列を含む二本鎖oligo nucleotideをプローブとして、ヒト星細胞から分離抽出した核蛋白をゲルシフト解析した。非標識プローブ(wild typeおよび変異導入プローブ)との競合によるバンドの濃さの比較や転写因子の特異抗体の前処理によるsupershiftの有無によって転写因子の同定をおこなった。本年度施行されたヒト肝星細胞株におけるゲルシフト解析により、TNF-alphaによるMMP-1の遺伝子転写調節が転写因子NF-kappaβ/p50を介して行われていることがはじめて明らかにされた(投稿中)。一方、ヒト膵星細胞のゲルシフト解析では、IL-1beta処理によるNF-kappaβオリゴプローブの結合増強は認められなかった。 また、中澤博江教授(東海大生理学)との共同研究により、iNOSノックアウトマウスに作製されたNASHモデルにおける活性型MMP-2とMMP-9の発現抑制が行われることによって肝線維化が進行することを報告した(BBRC326;45-51,2005)。
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