【目的】ウイルス性肝炎の病態である肝炎ウイルスに対する生体(宿主)の免疫応答を組織レベル、細胞レベル、分子レベルで詳細に解析し、その知見に基づいて、免疫応答を制御することによって肝炎の病態を修飾し、新しい治療法を開発しようとするために、我々が独自に作成した肝炎モデルマウスにおいて、ウイルス肝炎における肝臓内浸潤細胞を解析した。【方法】HBV組込みアデノウイルス(Ad-HBV)をマウスの尾静脈から投与すると、肝臓内へHBV遺伝子を導入し、肝細胞内でウイルスの複製とウイルス蛋白の発現を誘導することができる。HBV発現プラスミドを用いてマウスを免疫し、HBV特異的なCD8T細胞を誘導した。HBV特異的CD8T細胞存在下にAd-HBVを感染させて肝臓内へHBVを導入すると、CD8T細胞によるHBV抗原認識に基づく肝臓内の炎症細胞が誘導された。MHC class I dimerや細胞内IFN-・染色法を用いてHBV特異的なCD8T細胞を検出し、体内動態を詳細に検討した。【成績、結論】HBV特異的メモリーCD8T細胞は、脾臓などのリンパ組織とともに、末梢血中や、肝臓などの末梢組織中に広く分布していた。HBV特異的なCD8T細胞は肝臓でのHBV抗原の発現を速やかに認識して、肝臓内に激しい炎症反応を誘発した。炎症のピークであるAd-HBV感典後day 5にはHBV特異的なCD8T細胞は末梢血中から消失し、肝臓内に蓄積し活発に増殖していた。肝臓からウイルス抗原が消失したday 14ではHBV特異的CD8T細胞が再び末梢血中でも観察された。CD8T細胞の肝臓内への浸潤と一致してCXCL9やCXCL10などのケモカインが強く発現していた。新しいHBVモデルマウスを用いてHBV特異的細胞のダイナミックな生体内の動きとウイルス抗原排除後のメモリーCD8T細胞の再分布を詳細に検討できた。
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